営業キャッシュフローの説明と改善


営業キャッシュフローとは

経営事項審査のY評点指標の1つである営業キャッシュフローについて説明します。

計算式

営業キャッシュフローは以下のように計算します。

経常利益+減価償却実施額±引当金増減額-法人税住民税及び事業税±売掛債権増減額±仕入債務増減額±棚卸資産増減額±受入金増減額

これまでの他のY評点指標に比べて、非常に複雑な計算式です。また、この指標は比率ではなく絶対値(単位:億円)で図ります。

式の中にあるプラス・マイナスの部分は合計で5つあります。それぞれ○○○○増減額となっていますが、意味がことなりますのでここで説明します。

増えるとプラスになる項目

「増えるとプラスになる」という意味は金額が増えると営業キャッシュフローも増加し、Y評点に良い結果をもたらすという意味です。上記の式では引当金増減額、仕入債務増減額、受入金増減額(ともに赤色で表示しています)です。
引当金は貸倒引当金や退職給与引当金などで、将来の費用を予め費用に計上しておくものです。実際に支出したわけではないものを費用として見ていますので、その分キャッシュとしてはプラスと見るわけです。
仕入債務は工事未払金、支払手形のことです。仕入や外注に対してまだ支払っていない金額ということになります。これが減ると「支払った」と同じでキャッシュ(現金)は減ったと考えられます。その逆でこれが増えると「支払っていない」と同じでキャッシュ(現金)は逆に増えた(減っていない)と捉えます。ややこしいですが・・・キャッシュを増やそうとした場合、なるべく仕入債務は減らさない(払わない)方がいいとなります。もちろん実際には資材屋さん、外注先さんに対してそういうわけにはいきませんが。
受入金は「未成工事受入金」のことです。着手金や中間払いなど工事が完成していないのに施主や発注主から得られた入金のことです。「入金」だから単純に営業キャッシュフローも増加と考えてもらえれば結構です。

増えるとマイナスになる項目

「増えるとマイナスになる」という意味は金額が増えると営業キャッシュフローは逆に減少してしまい、Y評点は悪化するという意味です。上記の式では売掛債権増減額、棚卸資産増減額の2つです。青色で表示しています。
売掛債権は完成工事未収入金や受入手形のことです。完成して請求したのにまだもらっていない金額を表しています。この金額が増えると、「まだもらっていない金額が増える」と捉えることができるためキャッシュとしてはマイナス要因となります。逆に減ると「回収できた」わけですから、キャッシュとしてプラス要因となるわけです。
棚卸資産は未成工事支出金(仕掛工事に要した費用)、材料や貯蔵品などを表します。すなわち在庫です。在庫が増えるということは「仕掛工事に費用を使った」、「材料の仕入れに資金を使った」ということになりキャッシュとしてはマイナスになるわけです。在庫が減るとはすなわち「売れた」ということになりますからキャッシュとしてはプラスです。

点数

営業キャッシュフローは上限を15億円、下限を-10億円とします。営業キャッシュフローの値をもとに経営状況点数(A)を以下のように計算します。

経営状況点数(A) =-0.4650×(X1)-0.0508×(X2)+0.0264×(X3)+0.0277×(X4)+0.0011×(X5)+0.0089×(X6)+0.0818×(X7) +0.0172×(X8)+0.1906 (小数点第3位を四捨五入)

上記のX7が営業キャッシュフローということになります。1億改善すれば0.0818だけ経営状況点数(A)が改善します。

そこからさらに下記の計算によってY評点を計算します。

経営状況の評点(Y) = 167.3×A +583 (小数点第1位を四捨五)

さきほどの0.0818と167.3を掛けますと13.685となります。すなわ13点の改善となります。逆に1点改善させるためにはおよそ730万円の営業キャッシュフローの改善があればよいことになります。

営業キャッシュフローの改善

営業キャッシュフローの改善はどのように取り組めばいいでしょうか。

減価償却実施額と引当金増減額は改善には無関係

減価償却の実施と引当金の計上は営業キャッシュフローの計算式からすればプラス要因のように思いますが、その金額を増やせば、それだけ経常利益が減少します。そのため計算式にある以下の最初の3つの項目

経常利益+減価償却実施額±引当金増減額

これらの計算結果は減価償却の有無、引当金の有無に関係なく一定と考えて下さい。

改善のメインは経常利益、売上債権、棚卸資産

営業キャッシュフローの改善は経常利益の改善、売上債権の圧縮、棚卸資産の圧縮の3点が中心となります。通常、経常利益を改善させるためには売上高を増やす方策が取られます。すなわち商売の規模を拡大するわけですから売上債権も棚卸資産も併せて増加するのが普通です。しかし売上高を増やし、売上債権、棚卸資産を増やさないように注意することで営業キャッシュフローが改善していきます。

  • 売上債権で不良債権化し回収が不可能なものは貸倒損失として損失計上し売上債権からは削除します。
  • 棚卸資産で実際には使えない資材などがあれば、除却損として損失計上し棚卸資産からは削除します。

これらの2点の改善策は総資本を圧縮する方策として他のY評点指標のところでも紹介しています。しかしここではもう少し別の視点で見ていきたいと思います。

売上債権の改善

請求タイミングの管理

まずは請求タイミングの管理です。業務が完了しましたら得意先との契約条件に従い請求を行いますが得意先の締日ごとの支払処理となるため、締日を過ぎてしまうと翌月の締日まで先送りとなってしまいます。1日の遅れが実際には1カ月になってしまうのです。そして入金も1カ月遅れることになり、資金が足りなくなり無駄な借入をすることにつながるかもしれません。案件ごとに得意先の締日はしっかりと管理しておかなければなりません。

割引、ファクタリング

次は割引やファクタリングです。割引は期日前に受取手形を金融機関で現金化することですが割引料がかかってしまいます。ファクタリングは受取手形を買い取ってもらうことですが、これも額面より低い金額になるため差額はコストとなってしまいます。早く現金化できることは良いことなのですが、割引料などのコストがかかるうえに、受取手形の発行企業が倒産すると、その額面に対しての支払い義務(買戻し義務)が自社に発生してしまいます(ファクタリングの場合は契約の内容によります)。資金調達のために割引をするわけですからその時点で手元に資金が残っていない場合が多いのです。金融機関にその分の資金を追加融資してもらうことになりますが、融資が通らなかった場合には資金繰りが急激に悪化します。割引やファクタリングはこのようなリスクがあることに注意しておいてください。

取引条件の見直し

最後は取引条件の見直しです。長期的な視野に立った活動が必要ですが、得意先に対して取引条件の見直しを交渉するわけです。相手のあることですからなかなかうまくいきません。条件見直しのかわりに値下げを要求されることもあります。交渉ですから当然です。値下げはは避けたいですが、例えば条件見直しにより運転資金のための融資が不要になるのであれば収益改善のメリットもあるわけです。条件が見合えば進めてください。
ただし本来値下げはやるべきではありません。理想的な形は、「取引条件を変更したとしても御社に施工してほしい」と相手に思わせることです。それはすなわち自社の競争力を磨くということです。競争力が高まれば買いたたかれることも、悪い取引条件を受けることもありません。優位に交渉を進めるためには自社の競争力が必要なのです。

棚卸資産の改善

リードタイムの短縮

リードタイムとは着工から竣工までの期間のことをいいます。工期と考えてもらえれば結構です。リードタイムを短縮することのメリットはたくさんあります。
メリットの1つ目はもちろん棚卸資産(仕掛工事)の額の圧縮です。完成を早めて仕掛工事を完成工事にするわけですから棚卸資産が減少します。
もう1つは工期短縮による間接経費の削減です。これは利益率向上につながり他のY評点指標にも効果的です。

5S活動(3S活動)

次は5S活動です。整理・整頓・清掃・清潔・躾のそれぞれの頭文字のアルファベットがSのため5Sと呼ばれます。
まずは整理です。要るものと要らないものに区分し、要らないものは捨てます。要るかもしれないものは期限を定めて保管し誰も触らなければ要らないものとして処分します。捨てることは直接棚卸資産の圧縮につながります。また保管スペースも小さくて済みますので倉庫代などの経費削減にもつながります。
次は整頓です。整理して空いたスペースも活用しながら要るものの置き場所を決めていきます。ポイントは各人に所有させずに一か所に集めることと、全員にその置き場所を周知させることです。一か所に集めることで全体の在庫量が把握でき、無駄な発注を抑えることができます。置き場所を周知されることにより勘違いによる発注も抑えることができますし、モノを探す無駄な時間を減らすことにもつながります。
清掃は品質の向上、現場の安全確保にもつながります。
清潔とはきれいな状態を保つこと。整理、整頓、清掃が行き届いている状態を維持します。これにより整理、整頓、清掃で得られる効果も持続させるのです。
最後は躾です。躾といっても礼儀作法を学ぶのではなく、ここでは決められたルールを守ることをいいます。捨てるためのルール、置き場所のルール、清掃のルール、そしてそれを維持するというルール。これらのルールを全員が守れる会社が躾の行き届いた会社というわけです。

これまで記載した改善方法には長期的な取組みが必要なものも含まれます。安田コンサルティングでは顧問契約によるコンサルティングにて支援しております。詳しくはこちらをご覧ください。※安田コンサルティングのホームページに移動します