経営事項審査とは
建設業者の施工能力、財務の健全性、技術力等を判断するための資料として、その企業の完成工事高、財務状況、技術者数などの項目(客観的事項)を総合的に評価するものです。
公共工事を国、地方公共団体から直接請負う(元請)建設業者は、経営事項審査を必ず受ける必要があります(建設業法第27条の23)。
全国統一の審査方法により建設業者を工事種別ごとに点数付けする仕組みとも言えます。国や地方自治体などの入札に参加するためには、この経営事項審査と併せて入札参加資格申請が必要になります。そのため、経営事項審査は公共工事に参加するためにすべての建設業者が必要となる手続きとなります。
審査基準日とは?
経営事項審査は決算期間に併せて審査を行います。そのため、3月31日が決算日であれば、4月1日から翌年3月31日までの1年間が審査の対象となります。その対象の最終日(すなわち決算日)を審査基準日といいます。
有効期限
経営事項審査は審査基準日から1年7カ月有効です。そのため、例えば平成28年3月31日が審査基準日であれば、そこから1年7か月後の平成29年10月31日が期限となります。その間に新しい決算(平成29年3月31日)が出来ていますから速やかに新しい決算(審査基準日平成29年3月31日)にて経営事項審査を受けるようにします。
審査項目
評点はどのようにして得られるか
経営事項審査では経営規模、経営状況、技術力、社会性等の項目を総合的に判断して総合評点と呼ばれる点数を算出します。この総合評点をP評点と言うこともあります。そのP評点は以下の式で算出されます。
総合評定値(P)=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15
X1、X2、Y、Z、Wが先ほどの経営規模、経営状況、技術力、社会性等の項目を点数付けしたものになります。
X1:経営規模
X1は経営規模を年間平均完成工事高で評価するものです。「平均」とあるのは建設業特有の事情を考慮したもので、工期の長い工事に携わる場合に、完成年は大きな売上があがり、その前年は未成工事であったために売上がまったく上がらないといったことがありえます。それではX1評点の浮き沈みが激しくなってしまうために激変緩和措置として2年平均か3年平均を選択できるようになっています。
X1は工事種別ごとの年間平均完成工事高をもとに算出します。
一式工事業への専門工事の振替(算入)
審査対象建設業が土木工事業又は建築工事業(以下「一式工事業」という。)である場合は、許可を受けている建設業のうち一式工事業以外の専門工事(審査対象を除く。)に係る建設工事の年間平均完成工事高を、その内容に応じて当該一式工事業のいずれかの年間平均完成工事高に含めることができます。
この場合、専門工事の完成工事高については、審査対象年だけでなく直前2年又は3年分を土木一式又は建築一式のいずれか一方に全額算入する必要があります。いずれの一式工事業に算入するかについては、次表を参考に、具体的な専門工事の内容に応じて選択します。
例えば、とび・土工・コンクリート工事を一式工事業へ算入する場合、建築一式であれば少なくとも1件以上の建築系の工事が、土木一式であれば少なくとも1件以上の土木系の工事が必要です(とび・土工・コンクリート工事の完成工事高を分割して、土木一式及び建築一式それぞれに算入することはできません。)。
専門工事への他の専門工事の振替(算入)
審査対象建設業が一式工事業以外の専門工事である場合においては、許可を受けた建設業のうち専門工事(審査対象を除く。)に係る建設工事の完成工事高を、その建設工事の性質に応じて当該専門工事に係る建設工事の完成工事高に含めることができます。
この場合、専門工事の完成工事高については、年単位で完成工事高を積み上げることができます。例えば、審査対象年は積み上げるが、直前2年は積み上げないなどの選択が可能です。
具体的な業種の振分けは、次表に示すとおりとなります。
とび・土工・コンクリート |
⇔ |
石、造園 |
電気 |
⇔ |
電気通信、消防施設 |
管 |
⇔ |
熱絶縁、水道施設、消防施設 |
塗装、屋根 |
⇔ |
防水 |
X2:経営規模
X2は自己資本額と平均利益額の2つで算出します。
自己資本額はX1の激変緩和措置と同様の仕組みがあります。単年度の決算の値を用いるか2期平均の値を用いるか選択できます。
平均利益額は激変緩和措置がありません。必ず2期平均となります。ここでいう利益額とは営業利益+減価償却実施額で算出します。
Y:経営状況
Yは決算書をもとに財務的な経営状況を点数化したものです。点数化のために負債抵抗力、収益性・効率性、財務健全性、絶対的力量の4分野、それぞれ2つずつの指標にて算出します。
負荷抵抗力
記号 | 経営状況分析の指標 | 単位 | 算出式 | 上限 下限 |
点数UP |
---|---|---|---|---|---|
X1 | 純支払利息比率 | % | (支払利息-受取利息配当金)/売上高×100 | 5.1 -0.3 |
下げる |
X2 | 負債回転期間 | ヶ月 | 負債合計/(売上高÷12) | 18.0 0.9 |
下げる |
収益性・効率性
記号 | 経営状況分析の指標 | 単位 | 算出式 | 上限 下限 |
点数UP |
---|---|---|---|---|---|
X3 | 総資本売上総利益率 | % | 売上総利益/総資本(2期平均)×100 | 63.6 6.5 |
上げる |
X4 | 売上高経常利益率 | % | 経常利益/売上高×100 | 5.1 -8.5 |
上げる |
財務健全性
記号 | 経営状況分析の指標 | 単位 | 算出式 | 上限 下限 |
点数UP |
---|---|---|---|---|---|
X5 | 自己資本対固定資産比率 | % | 自己資本/固定資産×100 | 350.0 -76.5 |
上げる |
X6 | 自己資本比率 | % | 自己資本/総資本×100 | 68.5 -68.6 |
上げる |
絶対的力量
記号 | 経営状況分析の指標 | 単位 | 算出式 | 上限 下限 |
点数UP |
---|---|---|---|---|---|
x7 | 営業キャッシュフロー(絶対額) | 億円 | 営業キャッシュフロー(二期平均)/1億 | 15.0 -10.0 |
上げる |
x8 | 利益剰余金(絶対額) | 億円 | 利益剰余金/1億 | 100.0 -3.0 |
上げる |
Z:技術力
Z評点は技術職員数と元請完成工事高で算出します。
技術職員数
工種ごとに在籍する技術職員を下表のように点数付けし合計します。「その他」とは10年の実務経験者のことです。
1級技術者 | 基幹技能者 | 2級技術者 | その他 | |
---|---|---|---|---|
監理技術者資格者証保有かつ監理技術者講習受講 | 左記以外 | |||
1名につき、6点 | 同5点 | 同3点 | 同2点 | 同1点 |
元請完成工事高
完成工事高のうち元請として工事に携わった分の合計です。こちらも工種ごとです。X1評点の激変緩和措置で設定した2年平均、3年平均にこちらも合せます。
W:社会性
社会性は下記に内容に従って算出します。
労働福祉の状況W1 W1=ア+イ
項目 | 有・無 | 点数 | |
---|---|---|---|
ア | 建設業退職金共済制度の加入 | 有 | 15 |
退職一時金制度・企業年金制度の導入 | 有 | 15 | |
法定外労働災害補償制度の加入 | 有 | 15 | |
イ | 雇用保険の加入 | 無 | -40 |
健康保険の加入 | 無 | -40 | |
厚生年金保険の加入 | 無 | -40 |
注:イについては、「有」(加入している)・適用除外の場合は0点。
建設業の営業継続の状況W2 W2=ア+イ
ア:営業年数
営業年数 | 点数 | 営業年数 | 点数 | 営業年数 | 点数 |
---|---|---|---|---|---|
35年以上 | 60 | 24年以上 | 38 | 13年以上 | 16 |
34年 | 58 | 23年 | 36 | 12年 | 14 |
33年 | 56 | 22年 | 34 | 11年 | 12 |
32年 | 54 | 21年 | 32 | 10年 | 10 |
31年 | 52 | 20年 | 30 | 9年 | 8 |
30年 | 50 | 19年 | 28 | 8年 | 6 |
29年 | 48 | 18年 | 26 | 7年 | 4 |
28年 | 46 | 17年 | 24 | 6年 | 2 |
27年 | 44 | 16年 | 22 | 5年以下 | 0 |
26年 | 42 | 15年 | 20 | ||
25年 | 40 | 14年 | 18 |
イ:民事再生法又は会社更生法の適用の有無
適用の有無 | 点数 |
---|---|
無 | 0 |
有 | -60 |
防災活動への貢献の状況W3
防災協定締結の有無 | 点数 |
---|---|
有 | |
無 | 0 |
法令遵守の状況W4
法令遵守の状況 | 点数 |
---|---|
無 | 0 |
指示処分を受けた場合 | -15 |
営業の全部又は一部の停止処分を受けた場合 | -30 |
建設業の経理の状況W5 W5=ア+イ
ア監査の受審状況
監査の受審状況 | 点数 |
---|---|
会計監査人の設置 | 20 |
会計参与の設置 | 10 |
経理処理の適正を確認した旨の書類の提出 | 2 |
無 | 0 |
イ公認会計士等の数
公認会計士等数値については、次の表に当てはめ算出する。
公認会計士等数値=(公認会計士等の数×1)+(2級登録経理試験合格者の数×0.4)
年間平均 完成工事高 |
項目 | 公認会計士等数値 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 10 | 8 | 6 | 4 | 2 | 0 | |
600億円以上 |
13.6以上 |
10.8以上 |
7.2以上 |
5.2以上 |
2.8以上 |
2.8未満 |
|
150億円以上600億円未満 |
8.8以上 |
6.8以上 |
4.8以上 |
2.8以上 |
1.6以上 |
1.6未満 |
|
40億円以上150億円未満 |
4.4以上 |
3.2以上 |
2.4以上 |
1.2以上 |
0.8以上 |
0.8未満 |
|
10億円以上 40億円未満 |
2.4以上 |
1.6以上 |
1.2以上 |
0.8以上 |
0.4以上 |
0.4未満 |
|
1億円以上 10億円未満 |
1.2以上 |
0.8以上 |
0.4以上 |
― |
― |
0 |
|
1億円未満 |
0.4以上 |
― |
― |
― |
― |
0 |
研究開発の状況W6
平均研究開発費の額 | 点数 | 平均研究開発費の額 | 点数 | ||
---|---|---|---|---|---|
100億円以上 | 25 | 11億円以上 | 12億円未満 | 12 | |
75億円以上 | 100億円未満 | 24 | 10億円以上 | 11億円未満 | 11 |
50億円以上 | 75億円未満 | 23 | 9億円以上 | 10億円未満 | 10 |
30億円以上 | 50億円未満 | 22 | 8億円以上 | 9億円未満 | 9 |
20億円以上 | 30億円未満 | 21 | 7億円以上 | 8億円未満 | 8 |
19億円以上 | 20億円未満 | 20 | 6億円以上 | 7億円未満 | 7 |
18億円以上 | 19億円未満 | 19 | 5億円以上 | 6億円未満 | 6 |
17億円以上 | 18億円未満 | 18 | 4億円以上 | 5億円未満 | 5 |
16億円以上 | 17億円未満 | 17 | 3億円以上 | 4億円未満 | 4 |
15億円以上 | 16億円未満 | 16 | 2億円以上 | 3億円未満 | 3 |
14億円以上 | 15億円未満 | 15 | 1億円以上 | 2億円未満 | 2 |
13億円以上 | 14億円未満 | 14 | 5,000万円以上 | 1億円未満 | 1 |
12億円以上 | 13億円未満 | 13 |
5,000万円未満 |
0 |
建設機械の保有状況W7
建設機械の所有及びリース台数 | 点数 | 建設機械の所有及びリース台数 | 点数 |
---|---|---|---|
15台以上 | 15 | 7台 | 7 |
14台 | 14 | 6台 | 6 |
13台 | 13 | 5台 | 5 |
12台 | 12 | 4台 | 4 |
11台 | 11 | 3台 | 3 |
10台 | 10 | 2台 | 2 |
9台 | 9 | 1台 | 1 |
8台 | 8 | 保有なし | 0 |
国際標準化機構が定めた規格による登録の状況W8
国際標準化機構が定めた規格による登録の状況 | 点数 |
---|---|
ISO第9001号及び第14001号の登録 | 10 |
ISO第9001号の登録 | 5 |
ISO第14001号の登録 | 5 |
無 | 0 |
若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況W9
若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況 | 点数 |
---|---|
技術職員名簿に記載35歳未満の技術職員数が技術職員名簿全体の15%以上の場合 | 1 |
新たに技術職員名簿に記載された35歳未満の技術職員数が技術職員名簿全体の1%以上の場合 | 1 |
経営事項審査に関する窓口
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